2年間、ブリッジSEとして日本企業で仕事をしているベトナム人の話
※ Bản tiếng Việt Tản mạn chuyện kỹ sư cầu nối Nhật Bản
※ 今回の記事は、ベトナム語にも翻訳して発信します。日本にも、ベトナムにもブリッジSEについての理解が拡がればいいなと思っています。
皆さん、こんにちは。ザンと申します。
私は現在東京の Tribal Media House で働いているITエンジニアです。
今回、日本の会社でブリッジSE(以下、BrSE)として2年間働いてきた中で得てきた私自身の経験についてお話したいと思います。
この記事が、BrSEになりたい人にとって、参考資料になることを願っています。
また、この記事を書くことで、自分自身もこれまで取り組んできたことを振り返り、次にどのように進むかを考えるきっかけにして、より優れたBrSEになりたいとも思っています。
※ 皆さんがこの記事を読んで、BrSEに対してどういう風に思ったのか、知りたいです。コメント・メッセージなどをお待ちしています。(私のFacebookにコメントをもらえると嬉しいです。)
それでは、本題に入りましょう。
1. BrSEとは?
まず、BrSEの仕事について少し話したいと思います。
BrSEの定義を見つけようとしましたが、国際的な機関のオフィシャルな定義などは見つけられませんでした。ただ、Wikipedia で少しだけ文章を見つけました。以下は Wikipedia に書かれた定義です。
「グローバルなプロジェクト環境下において、ITと異分野・異業界との架け橋となり融合を行い、製品やサービスをプロジェクトチームとして生み出す人材を指す。」
ー Wikipedia「ブリッジシステムエンジニア」より引用
もう少し詳しく説明したいと思います。
BrSEは、オフショア開発チームとオンショア開発チームを結ぶ人材です。 主な仕事は「オフショア開発チームが要件を確実に理解できるようにすること」、「オフショアチームからの質問について、その意図をしっかりと理解し、オンショアの人に伝わるように翻訳することで、正しい回答を引き出すこと」などです。
チームの構成・状態によって、プロジェクトマネージャ、または開発マネージャが担当することもあります。
※ ちなみに、一部のブログ記事などでは、開発チームと顧客をつなぐ役割のことをBrSEと言っていることがありますが、今回私が話したいのはそちらではありません。(詳しくは3番目の項目で書いております)
2. BrSEの仕事に就いた理由は何ですか?
私のBrSEの経験について話す前に、すこし私の経歴について話したいと思います。
私は、2010年ハノイ工科大学に入学し、日本とハノイ工科大学との協力を得て、日本語ができるITエンジニア養成プロジェクト HEDSPI に参加しました。その5年間で、ITと日本語、また日本の文化やマナーなどについて学んでいました。
大学卒業後、日本の Tribal Media House にすぐに入社しました。
Tribal Media House は、ベトナム・ハノイに ベトナム現地法人のテックラボ(以下、テックラボ) という開発拠点を持っており、それがきっかけになりました。(その当時、テックラボ のメンバーは10人くらいでしたが、今では若いエンジニアが40人くらいいます!驚きですね!)
Tribal Media House に入ってから、cocosquareプロジェクトに参加し、システムの運用と保守をしていました。
そして新卒2年目からは、東京チームとハノイ開発チームの架け橋となる役割として働いています。そこからBrSEの仕事を始めきっかけになりました。
※ 1年目と2年目の仕事を以下のブログを書いていますので、ご覧でください。
3. 私のBrSEとしての仕事
このように、新卒2年目からBrSEの仕事をどんどん始めました。ただ、東京チームとハノイ開発チームを繋げる仕事以外にも、自身も手を動かしてプロジェクトの開発・運用も行なっていたので、一般的なBrSEとは違うかもしれません。
4年目となった現在、私のBrSEとしての詳しい仕事は、以下の通りです。
- ハノイ開発チームのタスクを作成するために、日本のチームメンバーと相談して、タスクの要求・要件を理解すること
- ハノイ開発チームへ、タスクの要求・要件を正しく説明すること
- ハノイ開発チームからの質問・相談を受けて、回答すること
- ハノイ開発チームのタスクのステータスと開発進行状況を管理すること
- 日本チームに、ハノイ開発チームの進捗状況を報告すること
- ハノイ開発チームのソースコードレビュー、テスト、リリース
などです。
また、以下のタスクについてはこれまでの経験から、より重要だと意識して行動しています。
- 資料や日本側からのメッセージ翻訳
- お互いの理解を深めるためにチームのメンバーとコミュニケーションすること
4. BrSEの面白いこと
2年間、Tribal Media House のBrSEとして日本企業で仕事を経験して、面白いことやドキドキすることがたくさんありますが、以下の大切なポイントを3つ共有したいと思います。
● より多くの人と働けること
通常のデベロッパーと比較して、BrSEの仕事はより多くの人とコミュニケーションする機会があります。
私の場合、
- 会社の他の部署のメンバー
- ベトナムの開発チーム
- リーダー(またはマネージャー)
- 日本の開発チームのメンバー
などとコミュニケーションをとる機会があります。
日本人やベトナム人、またいろいろな技術や性格をもった人と仕事ができるのは、とても刺激になって面白いです。
● いろいろな面で自分自身を成長できること
一つ前に、“BrSEはいろいろな人とコミュニケーションできる” ということを書きましたが、実は私はそもそも会話するのは苦手な人でした。BrSEの仕事をしながら、いろいろコミュニケーションが取れるおかげで、それが改善できていると感じています。
さらにTMHで私は、BrSEであることで、いろいろなプロジェクトに参加する機会をGETできています。全体の開発状況によって、チームが変わることもあります。その時には、BrSEの人のやり方、チームメンバーにコミュニケーション方法も変えないといけないと感じています。そのため、新しい経験・新しいやり方が身につくと思います。
2年間でBrSEの仕事をしていることによって、まだ完璧ではありませんが、私の2年前よりいろいろな能力がアップできました。
例えば、
- コミュニケーション能力
- チームワーク能力
- 交渉能力
- 意思決定能力
- ディスカッション能力
- マネジメント能力
- リーダーシップ能力
です。
● チームがうまくいったとき、チームのメンバーがもっと成長したときには幸せ
チームが職場でより良い成果を上げたとき、またはより成長したチームのメンバーになったとき、「その一端を担えた」と感じます。それは素晴らしい気持ちであり、そして私の現在の仕事で前に進む動機を与えてくれます。
5. BrSEの仕事の難しさ
そんな面白いことがあるBrSEですが、やはり難しいことも多いです。どんなことを難しいと感じているかを考えてみると、以下のようになります。
● コミュニケーションが難しい
BrSEは、書いた通り、多くの人と働く機会を得られます。ただ、それはつまりコミュニケーションの難しさも上がるということを意味します。
- どのようにすれば、より正確に、言語や文化的な相違がある日本人の上司に意見を伝え、正しくフィードバックをもらうことができるか
- どのようにすれば、日本人メンバーとベトナム人メンバーとの間に起きる誤解の原因をうまく把握し、解決させることができるか
- どのように、メンバー間、日本とベトナム間で技術的な知識を説明し、共有することができるか
などについてずっと悩んでいます。
それを改善するための方法は、「よく経験して、意識して、そして改善する」ということしかないと思っています。
※ 外国人の同僚とのコミュニケーションについて興味があるなら、以前に書いたこの記事をぜひ読んでください。
● チームの作業進捗管理が困難
自分自身の仕事の進捗も管理するのは難しいですが、チームのタスクスケジュールを管理することはさらに困難です。
スケジュールを立てるのは時間がかかります。しかし、スケジュールは計画を作って終わりではありません。継続して進捗を管理し、調整しなければなりません。特にBrSEとしては、離れた距離にいるメンバーの状態を把握し、コミュニケーションを取りながら進めなければならず、これはとても難しくて、手間がかかります。
● 同時に多くの仕事をしなければならないとき、自分の仕事を管理することが難しい
これは会社や人によるかもしれませんが、私は現在、BrSEとしてベトナムと日本のコミュニケーションを支えると同時に、一開発担当者として実際に開発を行ったり、他の仕事(例えば間接作業)をしたり、と複数のポジションを担っています。
例えば、
- プロジェクト開発に参加する(コーディング、または開発者が問題に遭遇したときに問題の解決に参加する)
- プロジェクトの進捗管理
- 当事者間で情報をやり取りする
- プロジェクト品質管理(レビューコード、テスト)
- レポートを作成する
- 会社の業務のタスクをする
……
したがって、すべてのタスクを確実に完了させることは常に非常に困難です。また、いつでも突発の問題が発生する可能性があります。そのおかげで、私の調整と交渉の能力も向上しましたが...やっぱり大変ではあります。
6. これからBrSEになる方に伝えたい、2年間で気づいたBrSEのポイント
そんな難しさもあるBrSEですが、やはり面白くやりがいのある仕事です。これからBrSEになる人もいると思いますが、その時に役に立つポイントをまとめたいと思います。
● より優れたBrSEになるには、多くのエンジニアスキルが必要です。自分のスキルを完成させることを常に意識した方がいいと思います。
BrSEが遭遇する困難について述べましたが、BrSEは異なる国の人を繋がなければいけないと同時に、さまざまな役割の人のことを理解することが必要になります。
だから、それをまずは自分自身が経験して理解しておく必要があると思います。
そうすることで何に困っているかがより理解でき、適切なアドバイスを行うことができると思います。どのポジションの人にも言えることですが、エンジニアスキルをひとつずつ身につけていきましょう。
● コミュニケーションスキルは非常に重要です
BrSEの時間の大部分はコミュニケーションです。私の意見では、コミュニケーションするのは重要なので、コミュニケーションスキルを完成させることが常にBrSEの最大の目標です。
● 急がないで一歩一歩、継続して勉強することが必要です
BrSEには多くのスキルが求められます。たとえば、技術的な知識、言語、仕事に役に立つスキルなどです。
それら全てを習得するには多くの時間がかかるため、ロードマップとトライ&エラーの経験が必要です。焦らず、継続して勉強し続け、もっとよくしていくために改善できるところから始めていきましょう。
● 自分が何に対してモチベーションが上がるのか、どうしたら維持できるのかに目を向ける
面白いことがありますが、つらいことがたくさんあります。より優れたBrSEになっている道の途中であきらめないように、「なぜBrSEになりたいのか」「どんなことを成し遂げたいのか」という、自分のモチベーションに目を向け、明確にすることが必須だと思います。
● チームメンバーを日々成長させることを意識する
BrSEの仕事は、チームのメンバー全員と働くことです。チームメンバーの能力をアップさせないと仕事はスムーズに進まないと思います。
そのため、BrSEとして、チームメンバーをより理解し、できるかぎり日々向上させることを意識することを大事にしなければならないと思っています
7. 最後のメッセージ
私はこれからも、もっと良いBrSEになるための道を歩み続けたいと思います。
私達の会社では今、既存のプロジェクトに加えて、さらに多くの新しいプロジェクトが生まれ、開発されています。その中で私は、BrSEの役割がより重要になっていく、もっと成果を出していかなければならない、と感じています。
だから選んだ道についてもっと学び、そしてもっとチャレンジしていく必要があると思っています。楽しんで成長し、チャレンジしていきたいと思います!